「本を読んで生きていけたら」と夢想した経験を持つ人は多いはず。ニューヨークのライター、ジュリアン・レヴィ氏が、映画・映像化を見据えて小説を評価する「プロの読書家」クラーク・シュパイヒャー氏の仕事と苦労を取材・執筆しています。単に読むだけでなく、作品の映像化適性を判断するという専門的な役割を担う、ニッチながら確立された職業の実情に迫った内容です。
「好きなことを仕事に」の最右翼のように聞こえるこの職業、実態はだいぶ違うようです。
映像化の可否を評価する「プロの読書家」が何をしているかというと、ざっくり言えばスタジオや制作会社に代わって大量の原稿・刊行作品を読み込み、「これは映画・ドラマになるか」を判断するレポートを書く仕事です。単純な「面白い・面白くない」ではなく、物語構造・登場人物の映像向き具合・権利取得の費用対効果まで含めた総合評価が求められます。趣味としての読書とはかなり異なる、分析的かつ業務的な作業です。
この種の職業が成立している背景には、映像コンテンツ産業が原作IP(知的財産)に依存する度合いが高まっている事情があります。ゼロから脚本を起こすよりも、すでに読者に検証済みのストーリーを映像化するほうがリスクが下がると判断する制作側の論理は、ここ数年のサブスクリプション型配信サービスの急増とともに強まったと言われています。その結果、評価の「入口」を担うスクリーナー(screener)と呼ばれるポジションの需要が生まれました。
ただし「苦労」の面も見逃せません。本記事が取材しているシュパイヒャー氏のような読書家は、フリーランス的な立場で多量の読書をこなしながら、1本あたりの報酬が必ずしも高くないという現実に直面しているとのこと。好きだから読める量には限界があるし、クオリティの低い原稿も仕事として最後まで読み切る義務が生じます。「好きな仕事は好きでなくなる」というよくある話の、ひとつの具体例がここにあります。
【編集部補足】
スクリーナー職は日本の出版・映像業界でも類似の役割が存在すると言われていますが、「プロの読書家」という肩書きで独立した職業として確立しているかどうかは、国・市場規模・業界慣習によって異なります。本記事はあくまでニューヨークを拠点とするシュパイヒャー氏の個人的な経験をもとにした取材であり、業界全体の標準的な待遇・雇用形態を示すものではない点は補足しておきます。
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