元博士課程の学生で動画ブロガー「Student Geng」として活動する耿洪偉(Geng Hongwei)さんが配信した動画をきっかけに、中国の学術界で研究不正スキャンダルが発展している。英科学誌Natureが6月12日に報じた内容によると、耿さんの告発を受けて関係する研究者らが懲戒処分を受けるという事態に発展。従来は専門家コミュニティ内部で処理されてきた研究不正の問題が、動画配信というオープンなプラットフォームを通じて社会問題化した形だ。
「告発系インフルエンサー」といえばこれまでビジネスや政治の領域の話だったが、ここへきて学術界にも同じ波が来ている――そう実感させるニュースだ。
もっとも、研究不正の告発自体はまったく新しい現象ではない。査読制度や撤回論文データベース(Retraction Watch などが知られる)が一定の機能を果たしてきた文脈がある。ただ、今回の耿さんのケースが示唆するのは、「専門家間のクローズドな回路」を経由せずとも、動画配信というパブリックなチャンネルが研究機関に懲戒処分を下させるだけの社会的圧力を生み出せるようになった、という構造変化だ。
【編集部補足】これが良いことか悪いことかは、一概に言えないと感じている。公式の不正調査が機能不全に陥っているケースでは、外部からの可視化が是正力として働く面がある。一方で、専門的な文脈や査読の蓄積なしに「動画での指摘」だけが拡散するリスクも否定できない。誤った告発がアカデミアの信頼性を損なう方向に働く可能性は、業界では以前から議論がある論点だ。
Natureがこの件をニュースとして取り上げたこと自体も興味深い。学術出版の中核にいる媒体が、「配信者による告発」というフォーマットの影響力を正面から認める報道をしたという意味で、学術界内部での受け止め方も変化しつつある可能性を示している。
日本にいる立場で考えると、国内の研究不正問題が配信者によって可視化されるという状況がいつ起きてもおかしくない段階に来ていると思う。研究機関のコンプライアンス体制や、外部告発を受けたときの対応手順が実質的に整備されているかどうかが、今後問われてくる局面が増えそうだ。
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