シンガポール国立大学(NUS)の研究チームが、ホウレンソウの葉緑体由来の構造をマウスの目に投与し、動物の眼内で光合成を行わせることに成功したと報告しました。動物は基本的に光合成を行えませんが、今回の研究はその常識に挑む成果として注目されています。植物の光エネルギー変換メカニズムを動物組織に応用するという、従来の生物学の枠を超えたアプローチであり、網膜疾患など光エネルギーを活用した医療応用への可能性を示す研究として位置づけられています。ただし元記事の要約の範囲では詳細な条件・手法・結果の数値は限られており、以下の考察は公開情報をもとにした編集部の解説を含みます。
「動物は光合成できない」という前提が揺らぐ日
生物学の教科書レベルの常識として、「植物・藻類・一部のバクテリアは光合成できるが、動物はできない」というものがあります。今回のNUSの研究チームによる報告は、その前提に対して真正面から挑む内容です。
業界文脈で言えば、植物由来の細胞小器官を動物細胞に取り込ませる研究は以前から試みられてきましたが、機能的に動作させることの難しさが壁でした。葉緑体はそれ単体では長期間機能を維持しにくく、ホスト細胞の免疫系が異物として排除しようとする問題もあります。NUSのチームがどのような形でこの課題を回避・克服したのかは、論文の詳細に当たる必要があり、元記事の要約範囲からは確認できません。
【編集部補足】目(眼内)という投与部位が選ばれたことは、医学的に合理性があります。眼は「免疫特権部位」と呼ばれ、他の組織に比べて免疫応答が抑制されているため、異物を比較的受け入れやすい環境です。網膜色素変性症や加齢黄斑変性など、光受容細胞が失われる疾患への応用研究において、光エネルギーを直接利用する代替システムとして葉緑体的な機能を持つ構造を活用するという発想は、以前から一部の研究者が探ってきた方向性です。
「今すぐ何かが変わる話」ではありません。マウスを対象とした基礎研究段階であり、ヒトへの臨床応用には安全性・持続性・免疫反応など、越えるべきハードルが多数残っています。ただし、「植物の光合成機能を動物組織で動かせた」という事実確認自体が持つ意義は大きく、今後の網膜医療や光駆動型バイオデバイス研究の文脈で引用される基盤的な成果になりえます。
シンガポール国立大学(NUS)の研究チームは、ホウレンソウの葉緑体由来の構造をマウスの目に投与することで光合成を行わせる研究の結果を報告しています。
(出典: GIGAZINE 2026-05)
やっぱり気になるのは「光合成を行わせた」の具体的な定義です。酸素産生なのか、ATP生成なのか、電子伝達系の一部が動いた段階なのか。元記事の要約では詳細が確認できないため、続報や原著論文のチェックを推奨します。
研究主体: シンガポール国立大学(NUS)研究チーム
内容: ホウレンソウ葉緑体由来の構造をマウスの眼内に投与し、光合成の実行を確認
段階: マウスを対象とした基礎研究。ヒト臨床応用には追加検証が必要
2026年5月時点では「動物組織での光合成実行の実証」という段階であり、SF的な「光合成で生きるサイボーグ」とは距離があります。ただ、こういう研究が着実に積み上がっていくのが生命科学の醍醐味でもあります。
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