Microsoftは、中国と連携する攻撃者グループ「Storm-0940」が、オープンソースのAI侵入テストツール「ARTEX」を用いて攻撃を自動化し、世界中の数百の組織を標的にしていると発表しました。同グループはリモート管理ツール「ConnectWise」を経由して顧客企業のMicrosoft 365環境に侵入するサプライチェーン攻撃にも関与しているとされています。特に深刻なのはその速度で、侵入から管理者権限の奪取まで3時間未満に完了した事例も確認されています。Microsoftは組織に対し警戒を強めるよう呼びかけています。
この報告でとりわけ注目したいのは、「3時間未満で管理者権限を奪取」という数字です。従来型の攻撃では、侵入→内部偵察→権限昇格という一連の工程を人間のオペレーターが手動で進めるため、セキュリティチームが異常を検知して対処する時間的な余裕がある程度ありました。それが、AIエージェントによる自動化で大幅に圧縮されているということになります。これは防御側にとって、アラートを受けてから人間が判断して動くという従来のフローが機能しにくくなる、という意味合いを持ちます。
サプライチェーン経由という点も見逃せない
Storm-0940が「ConnectWise」経由で顧客企業のMicrosoft 365に侵入した、という部分も重要です。ConnectWiseはITサービスプロバイダー(MSP)が顧客環境を遠隔管理するために広く使われているツールです。攻撃者がMSPのツール自体やその認証情報を足がかりにすれば、そのMSPを利用している多数の顧客企業へ一度に侵入経路が開く構造になっています。最終標的はエンドユーザー企業であっても、実際の侵入口はその企業が直接管理していない場所にある、という典型的なサプライチェーン攻撃の構図です。
【編集部補足】ConnectWiseのような管理ツールが攻撃の踏み台になる手口は、一般に「MSP経由のサプライチェーン攻撃」として業界では警戒されてきた類型です。自社のセキュリティ対策だけでなく、業務委託先や利用ツールのベンダー側のセキュリティ態勢を確認するいわゆる「サードパーティリスク管理」の重要性は、この種の事案が報告されるたびに改めて議論になる傾向があります。
「ARTEX」はオープンソース、という点の怖さ
Storm-0940が使ったとされる「ARTEX」がオープンソースのツールである点も、この事案の広がりを考えるうえで外せない視点です。コストゼロで入手でき、改変・再利用が可能なことは、攻撃の敷居を下げます。国家連携のグループが使っているツールが、より規模の小さい攻撃者グループや個人にも転用されうる、という点は頭に入れておいたほうがよいでしょう。
Microsoftの今回の発表は、特定グループへの帰属分析と攻撃手法の公開を兼ねており、防御側が対策を講じるための情報提供という側面を持ちます。ただ、攻撃ツールの詳細が広く知られることの副作用(模倣犯の増加)については、こうした情報公開が常にはらむジレンマでもあります。組織として対応するなら、まずMicrosoft 365のサインインログや管理者ロール変更のアラート設定を見直すところから始めるのが現実的です。
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